第2回ポルトガルギターフェスティバル レポート
2026年3 月6日と7日に第2回 ポルトガル ギター フェスティバルが、リスボンで開催されました。7日にシネマ・サンジョルジュで行われたコンサートの模様を、バレイロ在住のFood&Art フォトグラファー 立谷 早人さんにレポートして頂きました。
*******************
2026年3月6日から7日にかけて、「第2回ポルトガル・ギター・フェスティバル」がリスボンで開催されました。本フェスティバルはリスボン市立ファド美術館主催のもと、ポルトガル音楽文化において最も象徴的な楽器の一つであるポルトガル・ギターを称え、その歴史的背景を紐解くと同時に、楽器が持つ新たな可能性を再発見することを目的としています。
今回私が鑑賞したのは、7日にシネマ・サンジョルジュ劇場で行われた「リカルド・パレイラによるアルマンディーニョへのトリビュート・コンサート」。
「ポルトガル・ギターの神様」と称されるアルマンディーニョは、近代ファドの形成において決定的な役割を果たした音楽家であり、現在のファドの音楽的構造は、彼の功績なくしては語り得ないといわれています。
会場となったシネマ・サンジョルジュ劇場は、リスボンのメインストリートに面し、76年の歴史を誇る格式高い劇場です。その品格に相応しい重厚な赤絨毯とシャンデリアが観客を迎え、800席を超える客席は瞬く間に埋め尽くされました。会場に満ちた熱気から、この国に住まう人々の、ファドへの愛と誇りが肌に伝わってきます。
幕開けと共にメロディアスな楽曲のリズムが、会場全体を包み込みます。しかし、続く演奏では雰囲気が一変。艶やかな赤い照明に照らされた暗がりに響く音色は、幽玄かつ鋭利で、従来のファドのイメージを覆すほどの緊張感を帯びていました。ファドはしばしば「サウダーデ(郷愁)」の音楽として語られますが、この演奏は、むしろ剥き出しの情念や、粘度のある憎悪に近い強烈な音像が立ち上がってくるようでした。同じ一つの楽器から、これほどまでに多様な表情が引き出されることに驚きを覚えます。
続いて披露されたのは、三台のポルトガル・ギターによる合奏。大阪・関西万博でも耳にした馴染み深い旋律です。しかし、あの時に聞いた音とは何かが異なります。その瞬間、ファド奏者の月本氏から伺った「奏者が増えることで、一人ひとりの遊びの幅が広がる」という言葉が脳裏をよぎりました。ポルトガル・ギターにおける「グルーヴ」とは、まさにこのような音楽的な呼吸を指すのでしょう。
コンサートの終盤では、ポルトガル・ギターと弦楽四重奏による共演が披露されました。そこには、壮麗で伸びやかな響きが満ちていました。歴史的作曲家たちの遺した素晴らしい旋律が、現代の奏者の卓越した技量によって新たな息吹を与えられ、現代音楽としての品格を伴って光を放つのです。
幕が閉じると、観客から惜しみないスタンディングオベーションが送られました。伝統の本質を守り抜きながらも、新たな表現を果敢に受け入れていく。フェスティバル全体を貫くその精神は、文化を未来へと繋ぐ強い意志を感じさせるものでした。ポルトガル・ギターという楽器の可能性を信じ、新たな文化の地平を切り開こうとする敬意の灯火。その輝きを心に刻みながら、夜の静寂に包まれたリスボンの街を後にしました。



本文・写真
立谷 早人さん Hayato Tatsutani
Food&Art Photographer / Videographer
Instagram

